還暦過ぎても

還暦過ぎても、心は少年のまま…

嫌われた監督 落合博満は名将だったのか?

今さらですが、『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』(鈴木忠平著/文藝春秋)を読みました。

 

ノンフィクションとしては異例の14万部以上売れて、令和4年度の大宅壮一ノンフィクション賞受賞作でもあります。

 

 

Amazonオーディブルでも早聴きしたので、2度読んだことになります。

 

 

 

 

いろんな感想を持ちましたが、そのなかから気になった点を6つ紹介します。

 

1.2004年 なぜ落合は3年間投げられなかった川崎憲次郎開幕投手にしたのか

 

表向きに落合が試合後語ったのは

 

チームを生まれ変わらせるため、ずっと苦しんでいた川崎の背中を選手に見せたかった

 

ということを言っているが、裏では

 

情報漏れを徹底的に嫌った落合が、誰が情報を漏らすかをあぶり出すため

 

だったようです。

 

実際シーズオンオフには、リーグ優勝したにもかかわらず、コーチ陣のクビどころか長年球団に勤めていた裏方のクビまで大量に切っています。

YS-Kenjiro-Kawasaki20190711

 

2.2007年 なぜ落合は日本シリーズ完全試合目前だった山井大介投手を9回に交代させたのか

 

試合後、落合は山井投手からマメがつぶれたから代えてくれと申し出たのでと語ったそうですが、微妙に嘘です。マメは試合の前半からつぶれていました。森コーチから、山井が申し出るように仕向けています。

 

落合は2004年の日本シリーズ、リリーフに上がった岡本真也投手が調子が悪かったにも関わらず、中心選手の谷繁や立浪の意見を入れて交代させなかった。結果大量失点して逆転負けを喫しています。

 

そのことが周囲と距離をつくり非情に徹するようになったきっかけになりましたし、この2007年日本シリーズ終戦最終回での投手交代に繋がっているようです。

 

私には、羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく)ように思えますが…。

 

CD-Daisuke-Yamai

 

3.なぜ福留孝介中日ドラゴンズに逆指名で入団したのか

鹿児島県出身で大阪のPL学園に進んだ福留孝介は、1998年ドラフト会議で中日に逆指名して入団します。

 

中日は、福留の実家に近い宮崎県串間市でキャンプを張っていて、福留少年はよく中日キャンプを見に行っています。憧れだった立浪和義を見ていると、ボール拾いをしていた裏方のスタッフが、内緒で硬式ボールを渡してくれました。福留少年にとってその白球は宝物となり、中日との絆になりました。

 

福留はそうした縁があって、中日を逆指名したわけですが、落合は就任1年でそのスタッフを解雇しています。

 

*逆指名の理由はWikipediaの記事とは異なっています。

 

Kosuke Fukudome - 2008 - cropped

 

4.150kmの速球を打つコツ

150kmを超えるスピードボールを打つためには、バックスイングを小さくし鋭く振った方が適しているようですが、落合が和田一浩へしたアドバイスは正反対です。

 

大きくゆったり振れ

 

実際にやってみると、その方がバットをボールに合わせやすかったそうです。


5.落合は本当に名将か?

プロ野球 平成の名監督ランキングという内容の雑誌記事を見ると、落合は野村克也氏に次いで2位が多いですが、1位もあるように、常に上位に来ています。

 

しかし、私は当時パ・リーグファンだったので、正直言って、落合に名将というイメージはないです。

 

12チームしかない日本のプロ野球で、8年間で1度しか日本一になっていません。日本シリーズは1勝4敗でほぼ負け続けています。

 

なにより目先の勝利にばかりこだわって、長期的視点がなかったようで、それが後の中日の低迷に繋がっているのではないでしょうか。GMはさらに戦犯度を増しています。

 

ドラフトでは即戦力にこだわり、10年後を見据えて種をまくと考えるスカウトと対立します。若手にチャンスを与えることをせず、安定したベテランの力に頼ってばかりです。

 

勝利と育成を両立してこそ名監督ではないでしょうか。
ビジネスでも、経営者や管理職は相反する価値観を止揚することが求められます。

 

また、2006年WBC中日ボイコット事件の際の発言に見られるように、プロ野球全体を見た広い視野に欠けるようにも思えます。

 

落合自身がふつうのサラリーマンの生涯年収以上の年俸(4億以上?)を貰えているのは、野球の繁栄があってこそのはずですが…。


6.落合は本当は熱い情熱の人なのかもしれない

不愛想で冷徹非情の印象が強い落合ですが、優勝した瞬間はよく涙を流しています。

私は本当は熱い情熱の人ではないか、それを押し隠すための仏頂面かと思いました。


最後に この本について

ノンフィクションですが、著者の自分語りが多く自分に酔っている印象で、なんでも「プロ野球史上最大の…」というような誇張した表現も少なからずあって、その点はマイナスだと思いました。

 

 

 

対照的に育成と勝利を目指す高津臣吾