還暦過ぎても

還暦過ぎても、心は少年のまま…

「年だから物覚えが悪い」という思い込みを捨てれば、記憶力は保たれる

脳科学」と言うとは胡散臭いと思う人も多いことと思います。私もそうです。

本来は、近年急激に進んだ脳の画像解析や化学的な解析の成果として、新しい発見があるはずなのですが、マスコミやSNSに出てきているのは、それとは程遠いもののようです。どちらかというと心理学とか認知科学に近い。

 

しかし、(自称も含めて)脳科学者がマスコミから重宝されるように、話のネタとしては面白いかなと思いまして、1冊手にとってみました。

 


「老いは脳科学的に素晴らしい 年をとるほど実力は伸びる」 澤口俊之:著 幻冬舎:刊

 

 

この本に1つ良いことが書いてあります。

それは、「年だから記憶力が悪い」という思い込みを捨てろということ。

高齢になっても脳領域の神経細胞は若者と同様に増えるし、新たに覚える能力も、記憶力テストだと言わなければ、若者に近い成績だったという実験もあると言います。

スタンダールの名作「赤と黒」にも出てきますが、記憶するには、私は覚えられるという自信も大事だと思われます。



他はあんまり良い本とは思えないです。

第一、参考文献や引用文献などが掲載されていないので、どれくらい正しいか疑問があります。

例をあげると
著者は、緑茶は認知症を予防効果があるが、コーヒーにそんなデータはないと断じています。(190ページ)

しかし、新潟大から全く反対の報告が出ています。
 

www.med.niigata-u.ac.jp

新潟大の報告の結論

・コーヒー高摂取と認知症低リスクの強固なエビデンスを得た
・緑茶摂取と認知症リスクの関連については明確でなかった

(もっとも新潟大の報告も、今までの複数の報告の結論とは違っていて、その理由が説明できません)


第二に、著者の主張に理由づけがしているものが稀にありますが、それもどうかと思います。

例えば
著者は「キノコが前立腺がんのリスクを下げることは常識」と書いています。

その根拠となるデータが、日本の調査で「キノコを週に1~2回摂取している人は、1回未満の人より前立腺になるリスクが8%低い」というもの。
(167ページ)

これ、具体的に言うと、前立腺がんの13年間の発症率が、1回未満 3.3%に対して、1~2回摂取で約3%になるということなんですね。

ふつうの人間の感覚で、これでがんのリスクが下がったと言えるのでしょうかね? もちろん食べないより食べた方が良いですが…

まとめ
いくつになっても「私は記憶力が良い」と自信を持とう

この本のおすすめ度 ★★