ソニー半導体の奇跡: お荷物集団の逆転劇(斎藤 端:著)東洋経済新報社
スマートフォンカメラなどに搭載される「電子の目」、イメージセンサー。ソニーのイメージセンサー事業は現在シェアナンバーワンで、ソニーの収益面をがっちりと支えている。
しかしこの事業、実はソニー社内では「問題事業本部」「負け組」「お荷物集団」と言われ、事業所の中心も神奈川県厚木市の「辺境」にある。そして、会社のトップはひそかに事業売却を検討していた――。一体どのようにしてソニー半導体は幾多のピンチを乗り切り、ついには会社の基幹事業といわれるまでになったのか? 素人本部長とプロの技術者集団による痛快逆転ストーリー!
どーも!還暦少年です。
私は以前電機会社にいたことがありまして、その会社も半導体部門があったわけですが、そこの連中は他の部門とは違う独自のカルチャーを持っていました。
それで、というわけでもないでしょうが、彼らは半導体のことを知らない相手に対しては「話が通じない」と思っており、とても排他的でした。
例えば
他の部門から来て半導体の製作所長になった人が「なぜメモリの歩留りがこんなに日々変動するんだ?」と聞いても、製造現場の係長が「あんたに言ってもわからん」と答えたとか。(メモリの歩留りは会社の収益に多大な影響があるのに…)
納期については、客先に約束した納期は絶対のハズ…というわけでもなく、数日の誤差は当たり前とか…。それを調整するのが代理店の役目。
まあそんな感じでしたので、仕事を変わるとしても、会社内の他の部門へ、ではなくて、他社の半導体関連部門へ動いていたケースが、技術屋・事務屋問わず多かったようです。
逆に半導体の技術者が、家電などの部門に飛ばされても使い物になりませんでしたね。
著者(ソニーの元半導体事業部長)東工大を出ている理系の人ですが、経営工学が専門ということで企画畑を歩んできた半導体の素人です。
彼も「半導体の作り方もロクに知らない奴が来た」という風に言われたそうです。半導体屋さんの排他性も多少残っている中で、よくプロの技術者集団を動かせたものだと思います。
ただ、本書については、読んでいてわからない点も多くあります。とくに肝心な点がわかりません。
イメージセンサーとして使われていたのは、ひと昔前はCCD(固体撮像素子)でしたがC-MOSイメージセンサーの時代に移りつつありました。
CCDでは圧倒的シェアを誇ったソニーですが、C-MOSイメージセンサーでは立ち遅れていました。
そんな状況を画期的な「裏面照射型のC-MOSイメージセンサー」を開発して、一発逆転したのですが…
裏面照射型C-MOSイメージセンサーを開発する上で難しい問題が沢山あると言っていたのに、それをどう解決していったのか?
(誰それが苦労した、みたいな)たいへん浅い書き方しかしていないのでよく分かりません。
そのためキャッチコピーにある「痛快さ」はまったく感じませんでした。
Amazonのレビューでもその辺りの不満が並んでいます。
申し訳ないが、できればプロの書き手に書いて欲しかったなと思った次第です。
再読したい度:★